や》の如く口頭より焔《ほのほ》を吐きつゝ突ツ起ちてあり、
「君等は真面目に其様《そんな》ことを言つとるのか――労働者は無智で軽忽《けいこつ》で、離間者の一言で起《お》こしも臥《ね》かしも出来るもんだと云ふことを発表しようとするのか――我々の周囲には日夜探偵の居ることを注意し給へ――否《い》な、我々の間にも或は探偵が潜伏しとるかも知れないのだ」
「誰を探偵だと云ふのか、菱川君」と松本は疾呼《しつこ》大声《たいしやう》す、「僕が其《それ》を答へる前に、松本君、君は尚《な》ほ弁明の義務を負《お》んどるぢやないか、君は誰の言を信じて篠田君を探偵と云ふのだ、売節漢と云ふのだ」
「イヤ、其問題は既に経過した、其れとも君は此の松本を指して虚言者と云ふのか」
菱川の太き眉は釣り上がれり「其れが果して日本の労働者の言語なのか、日本の労働者は三百代言にも劣つた陰険な心を持つとるのか、――君は必ず或者から固く名前を秘する様に頼まれたのだらう、君が信用する或者とは、必ず憎《にく》むべき探偵であるに相違ない」
松本は沸騰《ふつとう》する怒気に口さへ利かぬばかり、
行徳は静に言ふ「諸君は少こし考へたならば、
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