》て暫時退席を要求致します」
議席は騒《さわぎ》だてり、我々は真実を以て交はる者なれば、他の議会に見る如き忌避《きひ》或は秘密等の厭《いと》ふべき慣例を用ひざるべしとの議論|盛《さかん》なりしが、篠田はやがて起ち上がりつ、
「我輩も実に其議論の主張者でありますが、既に発議者よりの要求ある以上は、発議者をして充分に言はんとする所を尽《ことごと》くさしめん為め、謹《つゝしん》で自ら退席致します」一揖《いちいふ》して出で去れり、
其の後影を一睨《いちげい》したる松本「諸君――我《わが》組合が尊敬して評議員の名誉をさへ与へたる篠田長二君が、何ぞ図《はか》らん、却《かへつ》て私利私慾の為めに我々の権利と幸福を売つて資本家党に降服したる証拠を捉《とら》へたのである」
松本は議席を見過はせり、
会衆は再び騒ぎ立てり「畜生」「馬鹿野郎」「除名せよ」「斬つて仕舞へ」等の声は一隅より囂々《がう/\》と起れり「誣告《ぶこく》」「中傷」「証拠を示せ」等の声は他の一隅より喧々《けん/\》と起れり、
「御指揮に及ばず、其証拠を御覧に入れるのです」と松本は手を揚げて之を制しつ「彼は愈々《いよ/\》山木剛造の
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