るもんですか、大抵推察して呉れ給へ――」
「モウ、判つたよ、是れ程の証拠があれば充分だ、吾妻君、若《も》し君が無かつたならば、我党は非常な運命に陥《おちい》る所であつた」と、松本は昂然《かうぜん》として席を離れ「浦和君、時間が余程過ぎた」と急がしつ、ガチリ、錠《ぢやう》を解きて廊下に出でぬ、
浦和は腕《うで》拱《こまぬ》きたるまゝ其後を追へり、
* * *
やゝ待ち倦《あぐ》みたる会員は急霰《きふさん》の如き拍手を以《もつ》て温厚なる浦和議長を迎へたり、議長は徐《おもむ》ろに開会の辞を宣して、今や書記をして今夜の議案を朗読せしめんとする時「議長ツ」と、大声に叫びて幹事松本常吉は起《た》ち上がりつ「本員は議事に入るに先《さきだ》ちて、一個の緊急動議を提起せねばなりませぬ」
彼は梟《ふくろふ》の如き鋭き眼《まなこ》を放つて会衆を一睨《いちげい》せり、満場の視線は期せずして彼の赤黒き面上に集まりぬ、
松本は咳《がい》一咳《いちがい》しつ「我が鍛工《かぢこう》組合の評議員篠田長二君の身上に就《つい》て、一個の動議を提出するんですから、先づ同君に向《むかつ
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