長女梅子と結婚の内約|整《とゝの》ひ、伊藤侯爵が其|媒酌人《ばいしやくにん》たることを承諾したのである、彼は九州炭山坑夫同盟の真相を悉《ことごと》く大株主にして其重役なる山木に内通して、予防策を講ぜしめ、又た政府の狗《いぬ》となつて社会主義倶楽部及び我が組合の運動消息をば、一々府政へ密告して居るのである、今《い》ま幸《さいはひ》にして彼の内状を最も詳《つまびらか》にする、尤《もつと》も信用すべき人の口より其の報道を得たのは、天実に我々労働者の前途を幸ひするものと信ずるのである、依《よつ》て此《かく》の如き獅子身中の虫を退治せんが為めに本組合|先《ま》づ直《ただち》に彼を除名することの決議をして貰ひたい――緊急動議の要旨は是《こ》れである」
 松本は昂然《かうぜん》会衆を見廻して、自席に復せり、満場相顧みて語なし、
 議長浦和は徐《おもむ》ろに其席に起てり「松本君の動議は実に驚くべき問題でありまして、自分に於《おい》ては大《おほい》に心を苛《くるし》めて居りますが、就《つ》きましては――」
 議長の言|尚《な》ほ央《なかば》なるに、「議長」と呼《よん》で評議員席に起立したるは、平民週報主
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