《ぶこく》など申すのぢやありませんがネ」と浦和はしとやかに「随分誤解と云ふこともあるものですから――篠田|様《さん》が主義を売つて山木の娘と結婚なさるなどとは何分にも想像が着きませんよ、第一、篠田様は山木の為に教会の方を除名されなすつた程ですからナ」
「サ、其れが」と吾妻はセキ込み「君、魂胆《こんたん》の在る所です、其れ程に仕組まねば我が同志を欺くことは出来ないのだ、現に見給へ、既に除名と定《き》まつて居る教会の親睦会《しんぼくくわい》へ、而《し》かも山木の別荘で開いた親睦会へ出席したのは何故《なぜ》であるか、特《こと》に其日山木の娘の梅子と云ふのと密会したのは何故であるか、其上に山木の長男《むすこ》の剛一と云ふのなどは常に篠田の家へ出入《でいり》して居るでは無いか――特《こと》に君等は知らぬであらうが、彼が表面非常な貧窮と質素とを装ふに拘《かゝは》らず、其の実は驚くべき華奢贅沢《きやしやぜいたく》をして居るのだ、彼を指して道徳堅固な君子だなど思ふのは、其の裏面を知らない者の買ひかぶりである、僕の如きも現に欺《あざむ》かれて居た一人《いちにん》のだ、そりや君、酒は飲む放蕩《はうたう》は
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