や》ましいことがありますか、貴女こそ婦人中の最も幸福な方だと、私真実思ひますよ」
 答なき銀子の長き睫毛《まつげ》には露の玉をさへ貫くに梅子はいよゝ怪《あやし》みつ「貴女、何かおありなすつて――」
「梅子さん」と銀子は始めて涙を呑みつ「――男と云ふものはほんとに厭《いや》なものだと思ひましてネ、そりや女の方に足らぬ所がありもしませうけれど――」
「けれど銀子さん、道時さんに何もおありなさるんぢや無《ない》でせう」
「梅子さん、私、貴嬢《あなた》だから何も角《か》もお話しますがネ――矢張有るんですよ――つまり、私の不束《ふつつか》故に、良人《をつと》に満足を与へることが、出来ないのですから、罪は無論私にありますけれど、――男も亦《ま》た余り我儘《わがまゝ》過ぎると思ひますの――梅子さん、是れは世界の男に普通のでせうか、其れとも日本の男の特性なのでせうか」
「けれど銀子さん、道時さんが不品行を遊ばすと云ふ様なことは無いでせう」
 銀子は俯《うつむ》きて首を振りぬ、
 良久《しばし》ありて銀子はホツと吐息しつ「梅子さん、ほんとに幸福と思つたのは、結婚後の一年|許《ばかり》でしたの、私の心が静
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