の胸に立つたのです、其れは貴女も御聞き及びになりましたやうに、私の父と篠田|様《さん》とが、仇敵《かたき》の如き関係になつたことです、けれど――銀子さん、私は篠田様の御議論が至当だと思ひました、私は常に父などの営利事業に不愉快を感じで居たのです、決して道理にも徳義にも協《かな》つたこととは思ひませんでしたが、篠田様の御議論を拝見して、始めて能《よ》く父等の事業の不道理不徳義なる、説明を得たのでした、其れで私は、彼人《あのかた》を良人《をつと》にすると云ふことは事情の許《ゆ》るさないものと思ひ諦《あきら》め、又た一つには、私の様な不束《ふつつか》な者が、彼様《あのやう》な偉い方の妻となりたいなど思ふのは、身の程を知らぬものと悟りましてネ、其れに彼人は既に家庭の幸福など云ふ問題は打ち忘れて、只だ偏《ひとへ》に主義の為めに御尽くしなさるのを知りましたものですから、私は心中に理想の良人と奉仕《かしづ》いて、此身は最早《もは》や彼人の前に献げましたと云ふことを慥《たしか》に神様に誓つたのですよ」
 彼女《かれ》は心押し鎮《しづ》めつ「ですから銀子さん、私の心は決して孤独《ひとり》ではありません、
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