「それから梅子さん、如何《どう》なすつて」
と銀子はホヽ笑《ゑ》みつゝ促《うな》がすを梅子は首打ち振りつ、
「私、いや、貴女《あなた》はお弄《なぶ》りなさるんだもの――」
上気せる美くしき梅子のあどけなき面《かほ》を銀子は女ながらに惚《ほ》れ惚《ぼ》れと眺め「私が悪るかつたの、梅子さん、何卒《どうぞ》聴かして下ださいな」
「何だか可笑《をか》しいのねエ」と、梅子は羞《はづ》かしげにホヽ笑みつ「一昨々年の四月の初め、丁度《ちやうど》桜の咲き初《そ》めた頃なの、日曜日の夜の説教をなすつたのが――銀子さん、私、何だか――」
と面《かほ》背反《そむ》くるを、銀子は声低くめて「其方が篠田様であつたんでせう」
梅子は俯目《ふしめ》に首肯《うなづ》きつ「左様《さう》なんです、長く米国に留学なされた方で、今度永阪教会へ転会なされたと云ふんでせう、何様《どん》な人であらうと思つて居ますとネ、やがて講壇へお立ちになつたのが、筒袖《つゝそで》の極《きは》めて質朴な風采《ふうさい》で、彼《あ》の華奢《はで》な洋行帰の容子《ようす》とは表裏の相違ぢやありませんか、其晩の説教の題は『基督《キリスト》の社
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