教へて見たいと云ふことが沢山《たくさん》書いてあるもんですからネ――其れを父に懇願したのです、けれど銀子さん、貴女も御承知の如き私の家庭でせう、父は私が実母《はゝ》の顔さへ知らないのを気の毒に思つて居ます所から、余程私の願ひに傾いて呉れましたけれど……後には父から私に頼む様にして、其れを思ひ止まつて呉れよと言ふのですもの――私は、銀子さん其時《そのとき》始めて世の中に失望と云ふことの存在を実験したのです」
「銀子さん」と梅子は語を継《つ》ぎつ「其頃私は貴女《あなた》の曾《かつ》ての傷心《なげき》に同情しましたの、何時でしたか、貴女は夜中に私の寄宿室《へや》に来《いら》しつて仰《おつ》しやつたことがありませう、――若《も》し如何《どう》しても菅原様へ嫁《ゆ》くことが出来ないならば、私は一旦《いつたん》菅原様へ献げた此の聖《きよ》き生命《いのち》の愛情を、少しも破毀《やぶ》らるゝことなしに抱《いだ》いた儘《まゝ》、深山幽谷へ行つて終《しま》ふ心算《つもり》だつて――」
「あら梅子さん」と銀子は面《かほ》赧《あか》らめつ「貴女も思ひの外《ほか》、人が悪くつてネ――」
「左様《さう》ぢやありま
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