んが各々《てんでに》理想の男《ひと》を描いて泣いたり笑つたり、欝《うつ》したりして騒いで居なさる時にでも、真正《ほんたう》に貴嬢ばかりは別だつたワ――他人様《ひとさん》のことばかり言へないの、私だつてもネ、梅子さん、笑つちや厭よ、道時のことでは何程《どんなに》貴嬢の御世話様になつたか知れないワ、私、貴嬢の御恩を忘れたこと有りませんよ――彼頃《あのころ》の貴嬢の御面《おかほ》は全く天女でしたのねエ――けれど梅子さん、今ま貴嬢を見ると、何処《どこ》とも無く愁《うれひ》の雲が懸《かゝ》つて、時雨《しぐれ》でも降りはせぬかの様に、憂欝《いううつ》の色が見えるんですもの、そりや梅子さん貴嬢ばかりぢやない、誰でも、齢《とし》と共に苦労も増すに定《きま》つて居ますがネ、只《た》だ私、貴嬢の色に見ゆる憂愁《いうしう》の底には、女性《をんな》の誰も免《まぬが》れない愛情の潜んで居るのぢや無からうかと思ふんですよ――私などは斯様《こんな》軽卒《がさつ》なもんですから、直ぐ挙動に顕《あら》はして仕舞《しまひ》ますがネ、貴嬢の様に強意《しつかり》した方は、自ら抑へるだけ、苦痛も一倍|酷《ひど》いだらうと察しま
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