ふんでせう、梅子さん、貴嬢《あなた》が地獄の子にでも生れ変つて来なすつたのを見た上でなくては、私は仮令《たとひ》道時の言葉でも、信用することが出来ないんです」
「銀子さん、姉さん、――有難う――」梅子は目を閉ぢて涙を堰《せ》きぬ、
十七の三
「けどもネ、梅子さん、」と銀子は容《かたち》を改《あらた》めつ「貴嬢《あなた》は飽《あ》く迄《まで》も独身主義を遣《や》り徹《とほ》さうと云ふ御決心なの」
梅子は只《た》だ首肯《うなづ》きつ、
「私《わたし》ネ、梅子さん、貴嬢《あなた》の独身主義には、心《しん》から同情を持つてるんですよ――貴嬢の家庭の御事情は私も能《よう》く存じて居るんですからネ――けれど私、梅子さん、怒りなすつちや厭《いや》よ、日常《いつも》さう思《おもふ》んですの、貴嬢の深い心の底にほんとに恋と云《いふ》ものが無《ない》んだらうかと――学校《こゝ》に居た頃の貴嬢のことは私、能《よ》く知つててよ、貴嬢の御心は、只《た》だ亡き阿母《おつかさん》を懐《おも》ふ麗《うる》はしき聖《きよ》き愛に溢《あふ》れて、外には何物をも容《い》れる余地の無《なか》つたことを――皆さ
前へ
次へ
全296ページ中161ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 尚江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング