昂《けんかう》、面色朱を濺《そゝ》ぎたる侯爵は忽然《こつぜん》として山木を顧みつ「然《し》かし山木、君もナカ/\酷《ひど》い男ぢやぞ、何《どう》ぢや、ぽん子は相変らず奇麗《きれい》ぢやろナ、今を蕾《つぼみ》の花の見頃と云ふ所を、突如《だしぬけ》に横合から根こぎにするなどは、乱暴極まるぢやないか、松島のは社会主義に対する帝国主義の敗北、我輩のは金力に対する権力の失敗ぢや」
頭掻きつゝ山木の困却の態に、侯爵は愈々興を催ふしつ「何程《なんぼ》花婿が放蕩《はうたう》して、大切《だいじ》な娘が泣きをつても、苦情を申入れる権利があるまい、ハヽヽヽヽ山木、君の様な爺《おやち》の機嫌《きげん》取つて日蔭の花で暮らさせるは、ぽん子の為めに可哀さうでならぬぢや」
剛造は只だ赤面恐縮、
大佐はニヤリと浜子を一瞥しつ「が、閣下、山木は閣下に比ぶれば、未《ま》だ十幾つと云ふ弟《おとゝ》ださうですよ」
剛造ほツと一道の活路を待つ「大きに松島様の仰《おほせ》の通りで、ヘヽヽヽヽ」
侯爵も頭撫でて大笑しつゝ「ヤ、松島、最早《もう》舅《しうと》の援兵か、余り現金過ぎるぞ」
「品川々々」と呼ぶ駅夫の声と共に※[
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