懇願致しますので――」
伊藤侯爵は空吹く風と聞き流しつ「二三の書生輩の空理空論を、左迄《さまで》恐るゝにも足らぬぢやないか、況《ま》して労働者などグヅ/\言ふなら、構まはずに棄てて置け、直ぐ食へなくなつて、先方《むかう》から降参して来をらう」
「所が閣下、何《ど》うやら亜米利加《アメリカ》の労働者などから、内々運動費を輸送し来るらしいので御座りまして、――若《も》し外国の勢力が斯様《かやう》なことから日本へ這入《はひ》つて来るやうになりませうならば、国体上容易ならぬ義かと心得まするので」
「ナニ、山木、別段不思議無いではないか、労働者が労働者の金を輸入するのと、君等実業家連が外資輸入を遣り居るのと、何の違《ちがひ》もあるまいではないか」
「では御座りまするが、閣下」と、山木は額を撫《な》でつ「探知致しましたる所では、近々東京に労働者等の大会を開いて、何か穏かならぬ運動を企てまする様子で、何《ど》うせ食ふことが出来ぬ乱暴漢《らんぼうもの》の集りで御座りまするから、何事が出来《しゆつたい》せんも図《はか》られませぬ次第で――それに新聞と云ふ程のものでも御座りませぬが、兎《と》に角《かく》
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