りまして――」
 空嘯《そらうそぶ》ける侯爵「金儲《かねまうけ》のことなら、我輩《わがはい》の所では、山木、チト方角が違ふ様ぢヤ――新年早々から齷齪《あくせく》として、金儲《かねまうけ》も骨の折れたものぢやの」
「閣下、実は旧冬から九州へ出掛けましたので――或は新聞上で御覧になりましたことかとも愚察|仕《つかまつ》りまするが、此度《このたび》愈々《いよ/\》炭山坑夫の同盟罷工が始まりさうなので御座りまして――」
「ふウむ」と侯爵は葉巻《シガー》の煙《けむ》よりも淡々《あは/\》しき鼻挨拶《はなあしらひ》、心は遠き坑夫より、直ぐ目の前の浜子の後姿にぞ傾くめり、
 浜子は彼方《あちら》向いて、遙《はる》か窓外の雪の富士をや詮方《せんかた》なしに眺《なが》むらん、

     十六の二

「閣下、近来社会党がナカ/\跋扈《ばつこ》致しまして、今回坑夫の同盟なども全く、社会党の煽動《せんどう》から起つたので御座ります、此分では将来何の事業でも発達上、非常な妨碍を蒙《かうむ》りまするわけで、何卒《なにとぞ》此際厳重に撲滅策《ぼくめつさく》を執《と》らるゝ様、閣下より一言、政府へ御指図下ださる義を
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