げいしや》だのツて御世話なすつて居らつしやるんですよ、ほんとに感心な方ですことネ――」
「其の芸妓《げいしや》のことで、老女《おば》さん、新聞などには大層、篠田さんの悪口が書いてあつたぢやありませんか」梅子の声は低く震へり、
「左様《さう》ですツてネ、貴嬢《あなた》、篠田さんが自分の妾になさるんだとか何とか書《かき》ましたつてネ、余《あ》まり馬鹿々々しいぢやありませんか、ナニ、皆《みん》な自分の心で他《ひと》を計るのですよ、クリスマスの翌日、彼《あ》の慈愛館へ伴《つ》れてお行《いで》になりましたがネ、――貴嬢、私の伜《せがれ》が生きてると丁度《ちやうど》篠田|様《さん》と同年のですよ、私、彼《あ》の方を見ると何時《いつ》でも涙が出ましてネ」
梅子はホツと面《かほ》赧《あか》らめつ「何と云ふ失礼な新聞でせうねエ」
此時、ベンチにはボツ/\人の顔見えぬ、長谷川牧師は扉を排して入り来れり、浅き微笑を頬辺《けふへん》に浮べて、
十六の一
午後五時三十分、東海道の上《の》ぼり※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車《ぎしや》、正に大磯駅を発せんとする刹那《せつな》、プ
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