《まぶた》拭《ぬぐ》ひつ「何ネ、――又た貴嬢《あなた》の亡母《おつか》さんのこと思ひ出したのですよ、――斯様《こんな》立派な貴嬢の御容子《ごようす》を一目|亡奥様《せんのおくさん》にお見せ申したい様な気がしましてネ、――」
答へんすべもなくて、只《た》だ鍵盤に俯《うつぶ》ける梅子の横顔を、老女は熟《つ》く熟《づ》くとながめ「何《どう》して、梅子さん、貴嬢《あなた》は斯《か》うまで奥様に似て居らつしやるでせう、さうして居らつしやる御容子ツたら、亡母《おつか》さん其儘《そのまゝ》で在《い》らつしやるんですもの――此の洋琴《オルガン》はゼームス様《さん》が亡母さんの為めに寄附なされたのですから、貴嬢が之をお弾きなされば、奥様《おくさん》の霊《みたま》が何程《どんな》に喜んで聴いてらつしやるかと思ひましてネ――オホヽ梅子さん、又た年老《としより》の愚痴話、御免遊ばせ――」
「アラ、老女《おば》さん、そんなこと――此の教会で亡母《はゝ》のこと知つてて下ださるのは、今は最早《もう》老女さん御一人でせう、家《うち》でもネ、乳母《ばあや》が亡母のこと言ひ出しては泣きます時にネ、きツと老女さんのこと申
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