」
「疑問て、剛さん」
「姉さん、貴嬢がほんたうに僕を愛し、僕を信じて下ださるなら、何卒《どうぞ》僕に打ち明けて安心させて下ださいませんか、僕は姉さんの独身主義と云ふのが解《わ》からないのです、其れは主義から出た結論でなく、境遇から来た迫害だと僕は思ふのです、――其れは貴嬢の持論に似合はぬ甚だ卑怯《ひけふ》なことだと思ふのです」
「卑怯つて何です」
「其れは、少しく言葉が過ぎたかも知れませんが、然《し》かし姉さん、旧思想の黒雲を誰か先づ踏み破る人が出なければ、世に改革の曙光《しよくわう》を見ることが出来ないと云ふのが、姉さんの主張ではありませんか、――今ま貴嬢《あなた》は啻《ただ》に旧思想のみならず、現時の不正なる勢力の裡《うち》に取り囲まれて居なさるのです、何故《なぜ》、姉さん、貴姉《あなた》は之を打ち破つて、幾百万の婦女子を奴隷《どれい》の境遇から救ふべき先導をなさいませんか、神聖なる愛情を殺して、独身主義などと云ふ遁辞《とんじ》を作りなさるのは、僕は実に大不平です」
「剛さん」
「いや、姉さん、僕は貴嬢《あなた》の理想の丈夫《ひと》を知つて居ます、貴嬢の理想の丈夫は即《すなは》ち
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