頬にかゝれる鬢《びん》の乱れ、ブツリ噛《か》み切つて壁に吐きぬ、
「聞いた風なことホザきやがる、銭《ぜに》取り道具と大目に見て居りや、菊三郎なんて大根に逆《のぼ》せ上つて、――」
「オホヽヽヽ養母《おつか》さん、逆上《のぼせあが》つて丈《だけ》は取消にして、下ださい、外聞が悪いから――それや、狸々《しやう/″\》花吉と異名《あだな》取る程、酒を呑《の》みますよ、俳優買《やくしやかひ》では毎々新聞屋の御厄介にもなりますよ、養母《おつか》さん、酒でも呑んで気でも狂はせずに、片時《かたどき》なりと此様《こんな》馬鹿げた稼業が勤まりますか、俳優々々《やくしや/\》と八釜敷《やかましく》言ふもんぢやありません、まア考へても御覧なネ、毎日毎夜|是《こ》れ程男の玩弄《おもちや》になつて居りながら、此世で仇讐《かたき》の一つも撃《う》つて置かなかつたなら、未来で閻魔様《えんまさま》に叱かられますよ、黄金《かね》で叩《はら》れた怨恨《うらみ》だから黄金で叩《は》り復《か》へして遣《や》るのさネ、俳優の様な意気地なしでも、男の片ツ端かと思《お》もや、養母さん、ちツとは癪《しやく》も収りまさあネ、あゝ、何卒
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