一日も早く此様|娑婆《しやば》は御免蒙《ごめんかうむ》りたいものだと思つてネ」
「ヘン、其様《そんな》に死《くたば》りたきや、小米の様に殺してでも貰ふが可《い》いや」
「養母《おつか》さん、可哀さうにも花吉にはネ、兼さんとか云ふ様な、実意の男《ひと》が無いんですよ、何《どう》せ芸妓町《げいしやまち》などへウロつく奴に、真人間のある筈が無いからネ――あゝ、ほんたうに米ちやんが、羨《うらや》ましい――」
 チリヽンと格子戸開きて、「只今《たゞいま》」と可愛い声してあがり来れる未《ま》だ十一二の美しき小女《せうぢよ》、只ならぬ其場の様子に、お六と花吉との顔|暫《し》ばし黙つて見較《みくら》べつ、狭き梯子《はしご》ギシつかせて、狐鼠狐鼠《こそこそ》低き二階へ逃げ行けり、其の後影ながめ遣りたる花吉、「彼《あ》の児の寿命もコヽ二三年だ――養母《おつか》さん、最早《もう》罪造りも大抵にお止《よ》しなねエ」言ひ棄てて起ち上がりつ、お六の叫ぶ「畜生」をフハリ聞き流がして、ツイとばかり縁端《えんさき》へ出でぬ、
「――アヽ、いやだ/\」

     十一の一

 冬枯の庭園の輝く日さへ一としほ荒寥《くわう
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