やがふ》を自白するんだナ」
「何を仰《おつ》しやる――」
梅子のキツとなるを、松島|笑《わらつ》て受け流《な》がし、
「左様《さう》だらう、未《ま》だ結婚もしない、公然約束もしない、父母の承諾を得たでもない、其れで良人があるとすれば、野合の外なからう」
「――貴所《あなた》は愛の自由と神聖とをお認めになりませぬか」
「神聖も糞もあるかい」
梅子の柳眉《りうび》は逆立《さかだ》てり「軍人の思想は其程《それはど》に卑劣なものですか」
「何ツ」松島は猛獅《まうし》の如く躍《をど》り上りつ、梅子の胸を捉《とら》へて仰《あふむ》けに倒せり、「女と思つて赦《ゆる》して置けば増長しやがつて――貴様《きさま》の此の栄耀《ええう》を尽くすことの出来るのは誰のお蔭だ、貴様等を今日乞食にしようと、餓死《うゑじに》させようと、我が方寸にあることを知らないか――軍人の卑劣とは聞き棄てならぬ一言だ――貴様の大事な篠田の受売だらう、見とれ、篠田の奴も決しで安穏に許るしては置かぬぞ、貴様等の為めに帝国軍人の名誉を毀《きずつ》けてなるものか」
力を極《きは》めて押し付くるを、梅子は絶えなんばかりの声振り絞《しぼ》りつ、「――人道の敵ツ」
黒髪バラリと振り掛かれる、蒼《あを》き面《おもて》に血走る双眼、日の如く輝き、怒《いかり》に震《ふる》ふ朱唇《くちびる》白くなるまで噛《か》み〆《し》めたる梅子の、心|決《きは》めて見上たる美しさ、只《たゞ》凄《すご》きばかり、
炎々たる情火に松島は、気狂ひ、心|悶《もだ》えて眼さへに眩《くら》くなれり、
「――復讐《ふくしう》――」
今や心狂ひたる軍人の鉄腕に擁《よう》せられたる、繊細なる梅子の身は、鷹爪《ようさう》に捉《と》らはれたる雛雀《すうじやく》とも言はんか、仮令《たとひ》声を限りに叫べばとて何処《いづこ》より、援助来らん、一点の汚塵《をぢん》だも留めたるなき一輪の白梅、あはれ半夜の狂風に空《むな》しく泥土《でいど》に委《ゐ》すらんか、
押へられたる儘《まゝ》、梅子は瞬《またゝ》きもせで睨《にら》み詰めたり、
松島は梅子を引き起しつゝ、其の繊弱《かよわ》き双腕《りやうわん》をばあはれ背後《うしろ》に捉《とら》へんずる刹那《せつな》、梅子の手は電火《いなづま》の如く閃《ひらめ》けり、
「キヤツ」と一声、松島の大なる躯《からだ》はドウと倒れぬ、
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