ら、私も宇治へ出かけたのです。そうしますとあちらで不思議なことが起こったと言いだしまして、母の介抱《かいほう》もさしおきまして、妹の尼はどうしてもこの方の命を助けたいと騒ぎ出しました。その若い病人も死人同様になっていましたがさすがに呼吸《いき》はあったのですから、昔の小説の殯殿《ひんでん》に置いた死骸《しがい》が蘇生《そせい》したという話を妹は思い出しまして、そんなことかと私の弟子の中の祈祷《きとう》の上手《じょうず》な僧を呼び寄せましてかわるがわる加持をさせなどしておりました。私は、惜しむべき年齢《とし》ではないのですが、旅の途中で病みました母に、正念に念仏もさせて終わらせたいと仏のお助けを乞《こ》うておりましてその人のほうはくわしく見ませんでした。何がそうさせていたかと思ってみますと、天狗《てんぐ》、木精《こだま》などというものが欺いて伴って来たものらしく解釈がされます。助けて京へ伴って来ましたあとも三月くらいは死んだ人と変わらぬようだったのですが、以前の衛門督《えもんのかみ》の妻でございました私の妹の尼は、一人より持っておりませんでした女の子をなくしましてから時はたっても、悲しみ
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