源氏物語
夢の浮橋
紫式部
與謝野晶子訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)薫《かおる》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)出家|遁世《とんせい》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−

[#地から3字上げ]明けくれに昔こひしきこころもて生く
[#地から3字上げ]る世もはたゆめのうきはし (晶子)

 薫《かおる》は山の延暦寺《えんりゃくじ》に着いて、常のとおりに経巻と仏像の供養を営んだ。横川《よかわ》の寺へは翌日行ったのであるが、僧都《そうず》は大将の親しい来駕《らいが》を喜んで迎えた。これまでからも祈祷《きとう》に関した用でつきあっていたのであるが、特に親しいという間柄にはなっていなかったところが、今度の一品《いっぽん》の宮《みや》の御病気の際に、この僧都が修法を申し上げて著るしい効果を上げたのを見た時から、大きな尊敬を払うようになって、以前に増した交情を生じたために、重々しい身でわざわざこの山寺へ訪ねて来てくれたとしてあらんかぎりの歓待《もてなし》をした。ゆるりと落ち着いて話な
次へ
全23ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング