切った清楚《せいそ》な感じのする聡明《そうめい》らしい顔ではあるが、はなやかな美は全然姉君一人のもののように女房たちも認めていた。碁を打つために姉妹《きょうだい》は今向き合っていた。髪の質のよさ、鬢《びん》の毛の顔への掛かりぐあいなど両姫君とも共通してみごとなものであった。侍従が審査役になって、姫君たちのそばについているのを兄たちがのぞいて、
「侍従はすばらしくなったね。碁の審査役にしていただけるのだからね」
 と、大人らしくからかいながら、几帳《きちょう》のすぐそばにすわってしまうと、女房たちは急に居ずまいを直したりした。上の兄の中将が、
「公務で忙しくしているうちに、姫君の愛顧を侍従に独占されてしまったのはつまらないね」
 と言うと、次の兄の右中弁が、
「弁官はまた特別に御用が多いから、忠誠ぶりを見ていただけないからといっても、少しは斟酌《しんしゃく》していただかないでは」
 と言う。兄たちの言う冗談《じょうだん》に困って碁を打ちさして恥じらっている姫君たちは美しかった。
「御所の中を歩いていても、お父様がおいでになったらと思うことが多い」
 などと言って、中将は涙ぐんで妹たちを見
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