それで普通の計らいをしましてはかえって不幸を招くことになると思いますから、運命に任せておくことにしまして、私の生きております間は手もとへ置くことにいたします。それから先は非常に心細く想像されますが、尼になるという道もあるのですし、その時にはもう自身の処置を誤らないだけになっていると思います」
などと夫人は泣きながら言って、大納言の好意を謝していた。
東の姫君にも同じように父親らしくふるまっている大納言ではあったが、どんな容貌《ようぼう》なのかを見たく思って、
「いつもお隠れになるのは困ったことだ」
と恨みながら、人知れず見る機会をうかがっていたが、絶対と言ってもよいほど、姫君は影すらも継父に見せないのであった。
「お母様の留守の間は私が代理になって、どんな用の時にも私はこちらへ来るつもりなのだが、まだ親と認めないお扱いを受けるのに悲観されます」
などと、御簾《みす》の前にすわって言っている時、姫君はほのかに返辞くらいはしていた。声やら、気配《けはい》やらの品のよさに美しい容貌も想像される可憐《かれん》な人であった。大納言は自分の娘たちをすぐれたものと見て慢心しているが、この人に
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