この継母《ままはは》はよく世話をして周囲にも気を配ることを怠らないのであった。
 大納言家の内が急に寂しくなった気がして、西の姫君などは始終いっしょに暮らした姉妹《きょうだい》なのであるから、物足らぬ寂しい思いをしていた。東の姫君も大納言の実子の姉妹とは親しく睦《むつ》び合ってきたのであって、夜分などは皆一つの寝室で休むことにしていて、音楽の稽古《けいこ》をはじめ、遊戯ごとにもいつも東の姫君を師のようにして習ったものである。東の女王《にょおう》は非常な内気で、母の夫人にさえも顔を向けて話すことなどはなく、病気と思われるほどに恥ずかしがるところはあるが、性質が明るくて愛嬌《あいきょう》のある点はだれよりもすぐれていた。こんなふうに東宮へ長女を奉ったり、二女の将来の目算をしたりして、自身の娘にだけ力を入れているように見られぬかと大納言は恥じて、
「姫君にどういうふうな結婚をさせようという方針をきめて言ってください。二人の娘に変わらぬ尽力を私はするつもりなのだから」
 と大納言は夫人に言ったのであるが、
「結婚などという人並みな空想をあの人に持つことはできませんほど弱い気質なのでございます、
前へ 次へ
全18ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング