を匂宮《におうみや》は御所などでお見つけになる時があると、そばへお呼びになってよくおかわいがりになった。聡明《そうめい》らしいよい額つきをした子である。
「弟だけを見ていて満足ができないと大納言に言ってくれ」
 などとお言いになるのを、そのまま父に話すと、大納言は笑顔《えがお》を見せてうれしそうにした。
「人にけおされるような宮仕えよりは兵部卿の宮などにこそ自信のある娘は差し上げるのがいいと私は思う。一所懸命におかしずきすれば命も延びるような気のする宮様だから」
 と言いながらも大納言はまず長女を東宮の後宮へ入れる準備をして、春日《かすが》の神意どおりに藤原《ふじわら》氏の皇后を自分の代に出すことができて、父の大臣は院の女御《にょご》を后位の競争に失敗させ、苦い思いをしたままで亡《な》くなったのであるから、霊の慰むようにもなればいいと心の中では祈っていた。その人は間もなく太子|宮《きゅう》へはいった。付き添いの女房から御|寵愛《ちょうあい》があるという報告が大納言へあった。後宮の生活に馴《な》れないうちは親身の者が付いていなくてはといって、真木柱夫人がいっしょに御所へ行っていた。優しい
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