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風流狂のようでございますがお許しください。
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 こんなふうな消息をあかずに書いて持たせてあげた。遊びの気分でなくまじめに娘の所へ自分を誘おうとするのであろうかと、さすがに宮は興奮をお感じになった。

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花の香を匂はす宿に尋《と》め行かば色に愛《め》づとや人の咎《とが》めん
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 と、まだ受け入れがたい気持ちを書いてお返しになったのを、大納言は飽き足らず思った。
 真木柱《まきばしら》夫人が帰って来て、御所であった話をした時に、
「若君がいつかお上《かみ》のお宿直をいたしまして、翌朝東宮様へまいりました時に、よい香がついておりましたのを、だれもそんなことを気づかずにおりましたのに東宮様はすぐお悟りになりまして、兵部卿の宮の所へ伺っていたのだろう、だから冷淡にして私の所へは来なかったのだと冗談《じょうだん》をおっしゃいまして、おかしゅうございました。宮様からお手紙でもまいったのでございますか」
 こんなことを良人に問うた。
「そう。梅の花がお好きな方だから、あちらの座敷の前の紅梅が盛りで、あまりきれいだったか
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