ら折って差し上げたのです。宮のお移り香は実際|馥郁《ふくいく》たるものだね。後宮の方たちだってああも巧妙に焚《た》きしめることはできないらしいがね。源中納言のはそうした人工的の香ではなくて、自身の持っている芳香が高いのですよ。どんなすぐれた前生の因縁で生まれた人なのだろう。同じ花だがどんな根があって高い香の花は咲くのかと思うと梅にも敬意を表したくなるからね。梅は匂宮《におうみや》がお好みになる花にできていますね」
 花の話からもまた兵部卿の宮のことを言う大納言であった。
 東の女王は細かい感情ももう皆備わる妙齢になっているのであるから、匂宮がお寄せになる好意を気づかないのではないが、結婚をして世間並みな生活をすることなどは断念していた。世間もまのあたり勢力のある父の子である方を好都合であるように思うのか、西の姫君のほうへは求婚者が次ぎ次ぎ現われてきて、はなやかな空気もそこでは作られるが、こちらは蔭《かげ》の国のように引っ込んで暮らしている様子を、匂宮はお聞きになって、御自身の趣味にかなった相手とますますお思いになることになり、始終大納言家の若君をお呼び寄せになっては、そっと手紙をおこと
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