あって、かえって他の姉たちは顔も見せるほどにして近づかせ、普通の家の兄弟と変わらないのであるが、重々しい上品さのある女王を、幸福の多い、はなやかな境遇に置いてみたいと常に望んでいるのに、太子の後宮へはいった姉が両親からはなばなしく扱われるのを見て、それも姉なのであるからよいわけであっても、不満足な気がするために、せめてこの宮を東の女王の良人《おっと》にしてみたいと心がけている時に、うれしい花の使いをすることになったのである。
昨日は大納言から歌をお贈りしたのであるから、まず宮のお返事を若君は父に見せた。
「おじらしになる歌だね。あまりに多情な御生活をされることに感心しないでいることをお聞きになって、左大臣や自分などに対しては慎しみ深くお見せになるのがおかしい。浮気《うわき》男におなりになるのもやむをえないほどきれいに生まれておいでになる方が、まじめ顔をされてはかえってお価値《ねうち》も下がるだろうが」
などと陰口《かげぐち》をしながら、今日も御所へ出す若君にまた、
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本《もと》つ香の匂《にほ》へる君が袖《そで》なれば花もえならぬ名をや散らさん
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