湧《わ》き上がるのであるから何を言うこともおできにならない。
「あまりに少女《おとめ》らしいではありませんか。思い余る心から、しいてここまで参ってしまったことは失礼に違いございませんが、これ以上のことをお許しがなくてしようとは存じておりません。この恋に私はどれだけ煩悶《はんもん》に煩悶を重ねてきたでしょう。私が隠しておりましても自然お目にとまっているはずなのですが、しいて冷たくお扱いになるものですから、私としてはこのほかにいたしようがないではございませんか。思いやりのない行動として御反感をお招きしても、片思いの苦しさだけは聞いていただきたいと思います。それだけです。御冷淡な御様子はお恨めしく思いますが、もったいないあなた様なのですから、決して、決して」
と言って、大将はしいて同情深いふうを見せていた。あるところまでよりしまらぬ襖子《からかみ》を宮がおさえておいでになるのは、これほど薄弱な防禦《ぼうぎょ》もないわけなのであるが、それをしいてあけようとも大将はしないのである。
「これだけで私の熱情が拒めると思召《おぼしめ》すのが気の毒ですよ」
と笑っていたが、やがておそばへ近づいた。し
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