源氏物語
夕霧一
紫式部
與謝野晶子訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)出《い》づるころ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一条|第《てい》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−

[#地から3字上げ]つま戸より清き男の出《い》づるころ後夜《ごや》の
[#地から3字上げ]律師のまう上るころ    (晶子)

 一人の夫人の忠実な良人《りょうじん》という評判があって、品行方正を標榜《ひょうぼう》していた源左大将であったが、今は女二《にょに》の宮《みや》に心を惹《ひ》かれる人になって、世間体は故人への友情を忘れないふうに作りながら、引き続いて一条|第《てい》をお訪《たず》ねすることをしていた。しかもこの状態から一歩を進めないではおかない覚悟が月日とともに堅くなっていった。一条の御息所《みやすどころ》も珍しい至誠の人であると、近ごろになってますます来訪者が少なく、寂《さび》れてゆく邸《やしき》へしばしば足を運ぶ大将によって慰められていることが多いのであった。初めから求婚者として現われなかっ
次へ
全56ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング