れた好みの優雅さはことさらにいうまでもない。この巻き物は特に沈《じん》の木の華足《げそく》の机《つくえ》に置いて、仏像を安置した帳台の中に飾ってあった。堂の準備ができて講師が座に着き行香《ぎょうこう》をする若い殿上人などが皆そろった時に、院もその仏間のほうへおいでになろうとして、尼宮の西の庇《ひさし》のお座敷へまずはいって御覧になると、狭い気のするこの仮のお居間の中に、暑いほどにも着飾った女房が五、六十人集まっていた。童女などは北側の室《へや》の外の縁にまで出ているのである。火入れがたくさん出されてあって、薫香《たきもの》をけむいほど女房たちが煽《あお》ぎ散らしているそばへ院はお寄りになって、
「空《そら》だきというものは、どこで焚《た》いているかわからないほうが感じのいいものだよ。富士の山頂よりももっとひどく煙の立っているのなどはよろしくない。説教の間は物音をさせずに静かに細かく話を聞かなければならないものだから、無遠慮に衣擦《きぬず》れや起《た》ち居の音はなるべくたてぬようにするがいい」
などと、例の軽率な若い女房などをお教えになった。宮は人気《ひとげ》に押されておしまいになり、
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