験僧と向き合って、衛門督の病気の当初から、その後なんということなしに重くばかりなってゆくことなどをこまごまと語っていた。
「どうかあなたの力で物怪が正体を現わして来るようにやってほしいものです」
 とも信頼したふうで言っているのも哀れであった。
「小侍従、聞いてごらん。何の罪で私がこうなっているかをご存じないものだから、女の霊が憑《つ》いているなどとごまかされておいでになるが、あの方以外に女として惹《ひ》くもののない私の心へ、あの方の霊が真実憑いていてくれるのなら、いやでならない自分の身もありがたくなるだろうよ。それにしてもだいそれた恋をして、あるまじい過失を引き起こして、人のお名を穢《けが》し、自身を顧みないようになる人は自分だけではない、昔の人にもあった罪なのだとみずから慰めようとするがね、そんなことで私の心は救われないのだよ。相手があの方なのだから、自責の念に堪えられまいではないか。生きていることももうまぶしくてならなくなったというのは、昔から世の中の人が言うように、一種特別な光の添った方らしい。大罪人でもないのに、お顔を見合わせた瞬間から私の心は混乱してしまって、脱《ぬ》け出し
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