源氏物語
柏木
紫式部
與謝野晶子訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)右衛門督《うえもんのかみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|冗談《じょうだん》で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−
[#地から3字上げ]死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙
[#地から3字上げ]に似ざる火のしづくおつ (晶子)
右衛門督《うえもんのかみ》の病気は快方に向くことなしに春が来た。父の大臣と母夫人の悲しむのを見ては、死を願うことは重罪にあたることであると一方では思いながらも、自分は決して惜しい身でもない、子供の時から持っていた人に違った自尊心も、ある一つ二つの場合に得た失望感からゆがめられて以来は厭世《えんせい》的な思想になって、出家を志していたにもかかわらず、親たちの歎《なげ》きを顧みると、この絆《ほだし》が遁世《とんせい》の実を上げさすまいと考えられて、自己を紛らしながら俗世界にいるうちに、ついに生きがたいほどの物思いを同時に二つまで重ねてする身になったことは、だれを恨むべくもない自己の
次へ
全54ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング