むすこ》たちを派遣などして呼び迎えて衛門督の病気に効験の現われることを期している大臣であるから、見て感じの悪いような野卑な僧などがあとへあとへとこのごろはたくさん来るのである。病人は何という名の病患でもなくて、ただ心細いふうに時々泣き入っていたりするのを、陰陽師《おんようじ》なども多くは女の霊が憑《つ》いていると占っているので、そうかもしれぬと大臣は思い、他へ憑きものを移そうとしてもなんら物怪《もののけ》の手がかりが得られないのに困り、こうして遠国の修験者などを呼び集めることもするのであった。今度山から来た僧も大男で、恐ろしい目つきをして荒々しく陀羅尼《だらに》を読んでいるのを、衛門督は、
「ああいやになる。私は罪が深いせいなのか、陀羅尼を大声で読まれると恐ろしくて、ますますそれで死ぬ気がする」
 と言いながら病床を出て、小侍従のいる所へ来た。大臣はそんなことを知らず、病人は寝入っていると女房たちに言わせてあったのでそう信じて、ひそかにこの山の僧と語っていた。大臣は年がいってもなおはなやかな派手《はで》な人で、よく笑う性質なのであるが、こうした侮蔑《ぶべつ》するに価《あたい》する山の修
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