悪くなってきているのに」
こう言って、宮はそのまま横におなりになった。
「この端書《はしが》きがあまりに身にしむ文章なんでございますもの」
小侍従は衛門督の手紙を拡《ひろ》げた。ほかの女房たちが近づいて来た気配《けはい》を聞いて、手でお几帳《きちょう》を宮のおそばへ引き寄せて小侍従は去った。宮のお胸がいっそうとどろいている所へ院までも帰っておいでになったために、手紙をよくお隠しになる間がなくて、敷き物の下へはさんでお置きになった。二条の院へ今夜になれば行こうと院はお思いになり、そのことを宮へお言いになるのであった。
「あなたはたいしたことがないようですから、あちらはまだあまりにたよりないようなのを見捨てておくように思われても、今さらかわいそうですから、また見に行ってやろうと思います。中傷する者があっても、あなたは私を信じておいでなさいよ。また忠実な良人《おっと》になる日が必ずありますよ」
これまではこんな時にも、子供めいた冗談《じょうだん》などをお言いになって、朗らかにしている方なのであったが、非常にめいっておしまいになり、院のほうへ顔を向けようともされないのを、内にいだく嫉妬《
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