源氏物語
若菜(下)
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)先《ま》づ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)幾|疋《ひき》かの

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)皇※[#「鹿/章」、第3水準1−94−75]《こうじょう》
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[#地から3字上げ]二ごころたれ先《ま》づもちてさびしくも悲
[#地から3字上げ]しき世をば作り初《そ》めけん  (晶子)

 小侍従が書いて来たことは道理に違いないがまた露骨なひどい言葉だとも衛門督《えもんのかみ》には思われた。しかももう浅薄な女房などの口先だけの言葉で心が慰められるものとは思われないのである。こんな人を中へ置かずに一言でも直接恋しい方と問答のできることは望めないのであろうかと苦しんでいた。限りない尊敬の念を持っている六条院に穢辱《おじょく》を加えるに等しい欲望をこうして衛門督が抱《いだ》くようになった。
 三月《やよい》の終わる日には高官も若い殿上役人たちも皆六条院へ参った
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