かった継母のことでこうまで悲しむのは不思議なことであると目をつけた。こんなふうに高官らも見舞いに集まって来たことをお聞きになって、院からの御挨拶が伝えられた。
「重い病人に急変が来たように見えましたために女房らが泣き騒ぎをいたしましたので、私自身もつい心の平静をなくしているおりからですから、またほかの日に改めて御好意に対するお礼を申しましょう」
 院のお言葉というだけで、もう衛門督《えもんのかみ》の胸は騒ぎ立っていたのである。こうした混雑紛れでなくては自分の来られない場所であることを知っているのであるから腹ぎたないふるまいである。
 蘇生《そせい》したのちをまだ恐ろしいことに院はお思いになって、夫人のためにもろもろの法力の加護をお求めになった。生霊《いきりょう》で現われた時さえも恐ろしかった物怪が、今度は死霊になっているのであるから、宗教画に描かれてある恐ろしい形相も想像されて、気味悪く、情けなく思召された院は、中宮のお世話をされることもこの時だけは気の進まぬことに思召されたが、しかしその人には限らず女というものは皆同じように、人間の深い罪の原因《もと》を作るものであるから、人生のすべ
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