べき)などとも口ずさみながら同車の人々とともに二条の院へ参った。まだ確かでないことであるから、形式を病気見舞いにして行ったのであるが、女房の泣き騒いでいる時であったから、真実であったかとさらに驚かれた。ちょうど式部卿の宮がお駈《か》けつけになった時で、萎《しお》れたふうで宮は内へおはいりになった。押し寄せて来た多数の見舞い客の挨拶《あいさつ》はまだことごとくは取り次ぎきれずに、家従たちの忙しがっている所へ左大将が涙をふきながら出て来た。
「どんなふうでいらっしゃるのですか。不吉なことを言う人があるのを私たちは信じることができないで伺ったのです。ただ長い御疾患を御心配申し上げて参ったのです」
などと衛門督は言った。
「重態のままで長く病んでおられたのですが、今朝の夜明けに絶息されたのは、それは物怪《もののけ》のせいだったのです。ようやく呼吸《いき》が通うようになったと言って皆一安心しましたが、まだ頼もしくは思われないのですからね。気の毒でね」
と言う大将には実際今まで泣き続けていたという様子が残っていた。目も少しは腫《は》れていた。衛門督は自身のだいそれた心から、大将が親しむこともな
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