の美から放射される光で満ちているような女王《にょおう》は、花にたとえて桜といってもまだあたらないほどの容色なのである。こんな人たちの中に混じって明石夫人は当然見劣りするはずであるが、そうとも思われぬだけの美容のある人で、聡明《そうめい》らしい品のよさが見えた。柳の色の厚織物の細長に下へ萌葱《もえぎ》かと思われる小袿《こうちぎ》を着て、薄物の簡単な裳《も》をつけて卑下した姿も感じがよくて侮《あな》ずらわしくは少しも見えなかった。青地の高麗錦《こまにしき》の縁《ふち》を取った敷き物の中央にもすわらずに琵琶《びわ》を抱いて、きれいに持った撥《ばち》の尖《さき》を絃《いと》の上に置いているのは、音を聞く以上に美しい感じの受けられることであって、五月《さつき》の橘《たちばな》の花も実もついた折り枝が思われた。いずれもつつましくしているらしい内のものの気配《けはい》に大将の心は惹《ひ》かれるばかりであった。紫の女王の美は昔の野分《のわき》の夕べよりもさらに加わっているに違いないと思うと、ただその一事だけで胸がとどろきやまない。女三《にょさん》の宮《みや》に対しては運命が今少し自分に親切であったなら
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