た今上第一の皇子が東宮におなりになった。そうなるはずのことはだれも知っていたが、目前にそれが現われてみればまた一家の幸福さに驚きもされるのであった。右大将が大納言を兼ねて順序のままに左大将に移り、この人も幸福に見えた。六条院は御譲位になった冷泉《れいぜい》院に御|後嗣《こうし》のないのを御心の中では遺憾に思召《おぼしめ》された。実は新東宮だって六条院の御血統なのだが、冷泉院の御在位中には御|煩悶《はんもん》もなくて過ごされたほど、例の密通の秘密は隠しおおされたが、そのかわりにこの御系統が末まで続かぬように運命づけられておしまいになったのを六条院は寂しくお思いになったが、御口外あそばすことでもないのでただお心で味けなくお感じになるだけであった。東宮の御母女御は皇子たちが多くお生まれになって帝《みかど》の御|寵《ちょう》はますます深くなるばかりであった。またも王氏の人が后にお立ちになることになっていることで、今度で三代にもなっていたから何かと飽き足らぬらしい世論があるのをお知りになった時、冷泉院の中宮《ちゅうぐう》は以前もこうした場合に六条院の強い御支持があって、自分の后の位は定《きま》っ
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