中納言にも子供ができているはずなのだが、うとい者に私をしているのかまだ見せませんよ。あなたがだれよりも先に数えてくだすって年齢《とし》の祝いをしてくださる子《ね》の日も、少し恨めしくないことはない。もう少し老いは忘れていたいのですがね」
 と、院は仰せられた。玉鬘もますますきれいになって、重味というようなものも添ってきてりっぱな貴婦人と見えた。

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若葉さす野辺《のべ》の小松をひきつれてもとの岩根を祈る今日かな
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 こう大人《おとな》びた御|挨拶《あいさつ》をした。沈《じん》の木の四つの折敷《おしき》に若菜を形式的にだけ少し盛って出した。院は杯をお取りになって、

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小松原末のよはひに引かれてや野辺の若菜も年をつむべき
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 などとお歌いになった。高官たちは南の外座敷の席に着いた。式部卿の宮は参りにくく思召《おぼしめ》したのであるが、院から御招待をお受けになって、御|舅《しゅうと》でいらせられながら賀宴に出ないことは含むことでもあるようであるからとお思いになり、ずっと時間をおくらせておいでにな
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