ろえたすぐれたものである。そのほかのことはきわだたせず質素に見せて実質のある賀宴をしたのであった。参列者を引見されるために客座敷へお出しになる時に玉鬘夫人と面会された。いろいろの過去の光景がお心に浮かんだことと思われる。院のお顔は若々しくおきれいで、四十の賀などは数え違いでないかと思われるほど艶《えん》で、賀を奉る夫人の養父でおありになるとも思われないのを見て、何年かを中に置いてお目にかかる玉鬘《たまかずら》の尚侍《ないしのかみ》は恥ずかしく思いながらも以前どおりに親しいお話をした。尚侍の幼児がかわいい顔をしていた。玉鬘夫人は続いて生まれた子供などをお目にかけるのをはばかっていたが、良人《おっと》の左大将はこんな機会にでもお見せ申し上げておかねばお逢《あ》わせすることもできないからと言って、兄弟はほとんど同じほどの大きさで振り分け髪に直衣《のうし》を着せられて来ていたのである。
「過ぎた年月のことというものは、自身の心には長い気などはしないもので、やはり昔のままの若々しい心が改められないのですが、こうした孫たちを見せてもらうことでにわかに恥ずかしいまでに年齢《とし》を考えさせられます。
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