すからお察しください。こんなことを告白してはかえってお憎みを受けることになろうと思って今までは黙っていたのですが、ただ哀れだと思っていただくだけのことで満足したい心にもなっているのです。頭《とうの》中将の近ごろの様子をご存じですか、あのころは明らかに第三者だと思っていた私が、こんなに恋の苦しみを味わうようになるなどということは冷淡にした時の報いです。今ではあの人が冷静になってしかもつながる縁のあることに満足しているのですから、うらやましくてなりません。かわいそうだとだけでも私をお心にとめておいてください」
 まだいろいろに言ったのであるが、中将のために筆者は遠慮しておく。玉鬘《たまかずら》に気味悪く思うふうの見えるのを知って、
「私を信じてくださらないのですね。ばかな真似《まね》などをする人間でないことはおわかりになっているはずですが」
 こう中将は言った。この機会にもう少し告げたい感情もあるのであったが、
「少し気分が悪くなってきましたから」
 と言って、玉鬘が向こうへはいってしまったのを見て、深く中将は歎息《たんそく》しながら去った。
 よけいな告白をしたと中将は後悔をしたのであっ
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