男である。ほかの者は、
「好色な男なのだから、その入道の遺言を破りうる自信を持っているのだろう。それでよく訪問に行ったりするのだよ」
とも言っていた。
「でもどうかね、どんなに美しい娘だといわれていても、やはり田舎者《いなかもの》らしかろうよ。小さい時からそんな所に育つし、頑固《がんこ》な親に教育されているのだから」
こんなことも言う。
「しかし母親はりっぱなのだろう。若い女房や童女など、京のよい家にいた人などを何かの縁故からたくさん呼んだりして、たいそうなことを娘のためにしているらしいから、それでただの田舎娘ができ上がったら満足していられないわけだから、私などは娘も相当な価値のある女だろうと思うね」
だれかが言う。源氏は、
「なぜお后にしなければならないのだろうね。それでなければ自殺させるという凝り固まりでは、ほかから見てもよい気持ちはしないだろうと思う」
などと言いながらも、好奇心が動かないようでもなさそうである。平凡でないことに興味を持つ性質を知っている家司《けいし》たちは源氏の心持ちをそう観察していた。
「もう暮れに近うなっておりますが、今日《きょう》は御病気が起こらな
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