たが、今の住居などはすばらしいもので、何といっても地方長官をしていますうちに財産ができていたのですから、生涯《しょうがい》の生活に事を欠かない準備は十分にしておいて、そして一方では仏弟子《ぶつでし》として感心に修行も積んでいるようです。あの人だけは入道してから真価が現われた人のように見受けます」
「その娘というのはどんな娘」
「まず無難な人らしゅうございます。あのあとの代々の長官が特に敬意を表して求婚するのですが、入道は決して承知いたしません。自分の一生は不遇だったのだから、娘の未来だけはこうありたいという理想を持っている。自分が死んで実現が困難になり、自分の希望しない結婚でもしなければならなくなった時には、海へ身を投げてしまえと遺言をしているそうです」
源氏はこの話の播磨の海べの変わり者の入道の娘がおもしろく思えた。
「竜宮《りゅうぐう》の王様のお后《きさき》になるんだね。自尊心の強いったらないね。困り者だ」
などと冷評する者があって人々は笑っていた。話をした良清《よしきよ》は現在の播磨守の息子《むすこ》で、さきには六位の蔵人《くろうど》をしていたが、位が一階上がって役から離れた
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