源氏物語
若紫
紫式部
與謝野晶子訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)瘧病《わらわやみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)某|僧都《そうず》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]春の野のうらわか草に親しみていとお
[#地から3字上げ]ほどかに恋もなりぬる (晶子)
源氏は瘧病《わらわやみ》にかかっていた。いろいろとまじないもし、僧の加持《かじ》も受けていたが効験《ききめ》がなくて、この病の特徴で発作的にたびたび起こってくるのをある人が、
「北山の某《なにがし》という寺に非常に上手《じょうず》な修験僧《しゅげんそう》がおります、去年の夏この病気がはやりました時など、まじないも効果《ききめ》がなく困っていた人がずいぶん救われました。病気をこじらせますと癒《なお》りにくくなりますから、早くためしてごらんになったらいいでしょう」
こんなことを言って勧めたので、源氏はその山から修験者を自邸へ招こうとした。
「老体になっておりまして、岩窟《がんくつ》を一歩出るこ
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