になりましたことから、あなた様がおいでになるようなことになりまして、あの家があの家でございますから侘《わび》しがっておいでになったようでございます。普通の人とはまるで違うほど内気で、物思いをしていると人から見られるだけでも恥ずかしくてならないようにお思いになりまして、どんな苦しいことも寂しいことも心に納めていらしったようでございます」
 右近のこの話で源氏は自身の想像が当たったことで満足ができたとともに、その優しい人がますます恋しく思われた。
「小さい子を一人|行方《ゆくえ》不明にしたと言って中将が憂鬱《ゆううつ》になっていたが、そんな小さい人があったのか」
 と問うてみた。
「さようでございます。一昨年の春お生まれになりました。お嬢様で、とてもおかわいらしい方でございます」
「で、その子はどこにいるの、人には私が引き取ったと知らせないようにして私にその子をくれないか。形見も何もなくて寂しくばかり思われるのだから、それが実現できたらいいね」
 源氏はこう言って、また、
「頭中将にもいずれは話をするが、あの人をああした所で死なせてしまったのが私だから、当分は恨みを言われるのがつらい。私の
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