源氏物語
夕顔
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)うき夜半《よは》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)長い間|恢復《かいふく》しない

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]うき夜半《よは》の悪夢と共になつかしきゆめ
[#地から3字上げ]もあとなく消えにけるかな (晶子)

 源氏が六条に恋人を持っていたころ、御所からそこへ通う途中で、だいぶ重い病気をし尼になった大弐《だいに》の乳母《めのと》を訪《たず》ねようとして、五条辺のその家へ来た。乗ったままで車を入れる大門がしめてあったので、従者に呼び出させた乳母の息子《むすこ》の惟光《これみつ》の来るまで、源氏はりっぱでないその辺の町を車からながめていた。惟光の家の隣に、新しい檜垣《ひがき》を外囲いにして、建物の前のほうは上げ格子《こうし》を四、五間ずっと上げ渡した高窓式になっていて、新しく白い簾《すだれ》を掛け、そこからは若いきれいな感じのする額を並べて、何人かの女が外をのぞいている家があった。高
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