問しましたところがその家の召使の男が前から病気をしていて、私のいるうちに亡《な》くなったのです。恐縮して私に隠して夜になってからそっと遺骸を外へ運び出したということを私は気がついたのです。御所では神事に関した御用の多い時期ですから、そうした穢《けが》れに触れた者は御遠慮すべきであると思って謹慎をしているのです。それに今朝方《けさがた》からなんだか風邪《かぜ》にかかったのですか、頭痛がして苦しいものですからこんなふうで失礼します」
などと源氏は言うのであった。中将は、
「ではそのように奏上しておきましょう。昨夜も音楽のありました時に、御自身でお指図《さしず》をなさいましてあちこちとあなたをお捜させになったのですが、おいでにならなかったので、御機嫌《ごきげん》がよろしくありませんでした」
と言って、帰ろうとしたがまた帰って来て、
「ねえ、どんな穢《けが》れにおあいになったのですか。さっきから伺ったのはどうもほんとうとは思われない」
と、頭中将から言われた源氏ははっとした。
「今お話ししたようにこまかにではなく、ただ思いがけぬ穢れにあいましたと申し上げてください。こんなので今日は失礼し
前へ
次へ
全66ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング